インパクトとフックのちがい
■ インパクト vs フック
販促物を評価する際に、「インパクト」 という言葉がよく使われます。
「お、インパクト強いね、いいね」、「これじゃインパクトないなあ」
しかし、村中は、大事なのはインパクトではなくフックだと考えます。
インパクトというのは「派手」「衝撃」「びっくりさせる」ことですが、フックの場合は、読み手の感情やニーズに引っかけて、言葉は悪いですが、「釣る」わけです。
■ インパクトは「目立つ」ことだが、フックは、目立ってはいけない
フックは、インパクトと違い、目立ってはいけません。あまり目立つと、読者(見込み客)から「釣ろうとしてるだろ」と見破られるからです。
さて、1年ほど前に、あるSI企業の依頼で、導入事例を作りました。
キャッチコピーは
「○○市 中小企業支援センター 総合福祉課では、基幹業務システム(Salesforceベース)の構築を、○○システムに依頼しました」
というものです。なんかフツーの、何の変哲もないコピーです。
内容も、○○システムが構築した内容を、地味に淡々と説明するだけのもので、特段のインパクトはありません。
おそらく、その事例を見ても、ほとんどの人は「フツーだね」としか思わないでしょう。あるいは、ちょっとインパクト弱くて、見込み客にアピールしないんじゃない?と思うかも知れません。
しかし、この事例の作成にあたっては、クライアントと綿密に打ち合わせを行い、フックの方針を決め、それを実装しました。この事例は、キャッチコピーにも本文にも様々なフックがあります。
■ インパクトは全員向けだが、フックには必ず「対象」がある。
事例というのは、普通は「新規の見込み客にアピールするため」に作るものです。
しかし、その事例は、クライアントと協議の上、「新規顧客は対象にしない」ことにしました。
こういうと、「ははーん、既存顧客に見せようとしているね」と思ったかも知れません。
なるほど、鋭い。はい、当たっています。確かに既存顧客は重要な読者対象(見込み客)です。
しかし、その事例では、見込み顧客ではなく、別の人を読者対象にすることにしました。導入事例で、見込み客じゃなくて、いったい誰を読者対象にするんだということですが、「商流の中で登場する重要職種」とだけ云っておきます。
この事例は、その人にアピールしようと、あちこちにフックを盛り込みました。その職種だったら、ここに反応してくれるはずだ、だから、こんな言葉を盛り込むべきだと、クライアントと協議の上、内容を綿密に設計し、繊細に言語を実装しました。
一般の人に「すごい!」と思われる必要はない。ただただフック対象の職種の人が反応してくれればよいわけです。
「○○市 中小企業支援センター 総合福祉課では、基幹業務システム(Salesforceベース)の構築を、○○システムに依頼しました」というコピーも、フツーに見える化とは思いますが、けっこう綿密にフックを盛り込んでいます。
「インパクト」は制作側の気分だけでも実装できます。「誰にアピールするのか」といった面倒なことは考えず、何か、ドーンと派手なことをやればいいわけです。
一方、「フック」は、対象読者の心理を綿密に想定しないと仕掛けられません。
別の言い方をすれば、フックは、こちらがフックをかけたいと考えた読者対象にしか有効でありません。これは全方位向けのインパクトとの大きな違いです。
現在、その企業は、当初の予定通り、本当のアピール対象である「商流の中の重要職種」にこの顧客事例を見せて、成果を上げています。
効果の高い導入事例を作るには、インパクトよりもフックの方が重要です。その方が、「売れる事例」になります。
- 2014.05.21 Wednesday
- 事例全般
- 09:52
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- by 村中明彦